邦楽界で不世出の名人といわれる、常磐津林中(1843-1906)のSP録音復刻版。将来を嘱望されて、常磐津節家元の養子となった林中だったが、養家と不和になり、郷里盛岡に隠遁して稽古三昧の日々を送っていた。しかし明治の名優、九代目市川團十郎はどうしても林中の演奏による歌舞伎上演を望み、林中を東京に呼び戻した。その後の林中の演奏は、邦楽界全体に演奏の研究対象として大きな影響を与えた。
このCDの元となる録音は、百数十年前のSP版録音であるが、ノイズのなかから、林中の金属的とも言える美声、「常磐津は話芸の一つ」であることを再認識させる豪快な語り口が鮮やかに浮かび上がってくる。
この録音によって、現在でも林中の演奏は多くの邦楽演奏家に影響を与え続けている。