2人のメロディー (木下弦二・太陽バンド)

2016年1月30日/サラヴァ東京
文/旧一呉太良 写真/いわいあや

『週末にのんびりお酒を飲んで歌を聴く。素敵な日常をかみしめよう。』
この日に行われたのは、ソロ・アルバムを発表した木下弦二(東京ローカル・ホンク)と太陽バンドという、共に久保田麻琴に見いだされた二人が、共演するライヴ。これは見逃すことが出来ません。 当日、東京は雪の予報が出ていました。地元木更津から出発する私も心配していたのですが、雪は無く雨も止んでおり、無事会場に着くことが出来ました。 10分ほど遅れて2人が登場。てっきり一人ずつ順番に弾き語っていくのかと思っていたので、驚きました。会場の空気を温めるために、いきなりセッション・パートを入れてくれたそうです。ここでは太陽バンドの曲を2つ披露。「ビビデ・バビデ・ブー」で起こったコール・アンド・レスポンスは(僕も含めて)ちょろちょろという感じでした。それでもぬくぬくと温まってきました。

続いて太陽バンドのパート。今回は弾き語り2人の共演なので、ササッと軽快に準備が出来ていいです。ほろ酔い気分で登場した太陽バンドこと畑俊行。アコースティック・ギターのストラップには、『太陽と旋律』みたいな顔がいっぱい付いていました。佇まいは飄々としています。情感をたっぷり込めた厚みのある歌声が暖かく心地よい。「今日は皆さんお酒を飲んで、気持ちよく聴いてください」という声掛けを何度かされていましたが、まさにその通りの音楽。停滞した状況に対する励ましが込められたメッセージも、日々厳しい叱咤激励を頂いている者にとってはよい薬になります。

ギター、ハーモニカの他に、いくつかの曲ではカズーが活躍。表情豊かな音色で楽しませてくれました。少しずつ伸びていき時に折れてしまう”つらら”を、人間の営みが続いていく様に見立てた穏やかな新曲「つらら」、スマップの名曲をソウル・ブルースなアレンジでカバーした「俺たちに明日はある」辺りが特に素晴らしく感じました。チラッとお話しされていましたが「俺たちに明日はある」はサム&デイヴが下敷きになっているのですね。目から鱗でした。

休憩を挟んで木下弦二の部が始まります。ギターはセミ・アコ(ギブソンかな)。半分くらいは東京ローカル・ホンクの曲で、残りはソロ・アルバムに収録された新曲という構成。高めの発声で少し小刻みに震える歌声、ブルージーなギター、共に素晴らしい。曲間の元気いい「ありがとう!」がとても清々しい。

曲ごとに短い解説を交えてくれて、情緒豊かな情景描写が素晴らしい歌詞の世界も、よりイメージしやすかったです。バンドの曲はシンプルなスタイルになったことで、ビートとリズムが強調されていたように感じました。ラテンやレゲエの要素にも通じる、チンドン音楽のような親しみやすさがあり。尚、ライヴには子供連れの方もいたらしく、赤ん坊の泣き声や子供の声が演奏に混じって聴こえるのが趣深かったです。そのような効果もあり、日常のノスタルジーを思い出させてくれる歌の魅力を大いに堪能しました。印象に残ったのは夏みかんが向けない子供の面倒を見ながら、成長を願う新曲「夏みかん」。

ナイスなカントリー。
上手く吹けない口笛をお客さんに助太刀してもらっていたところは、ほのぼのとした一幕でした。最後にもう一度2人のセッション。休憩していた畑俊行はいい感じに出来上がっておりました。

木下弦二の粘っこいブルース・ギターが冴えわたる「サマータイヨー」、太陽バンドとのデュエットで素敵な大団円となった「遠い願い」。共に素晴らしくハイライトとなりました。
その後は打ち上げパーティーが開かれていたようで、とても後ろ髪を引かれましたが、もはやタイム・アップ。ライヴの余韻を抱えつつ渋谷駅へとダッシュしたのでありました。今月のライヴも楽しかった!

※木下弦二さん、太陽バンドさんのご紹介

木下弦二は東京ローカル・ホンクというバンドで作曲、ギター、ヴォーカルを担当されています。東京ローカル・ホンクは、1970年代頃のアメリカ南部(スワンプ)、西海岸の音楽(グレイトフル・デッド含む)をルーツとしたサウンドに、日常をテーマとした日本語詞を乗せて演奏する4人組ロック・バンド。前身グループである「うずまき」時代を含めれば20年を超えるキャリアを持つベテランです。

一方、太陽バンドは畑俊行によるソロユニット。カントリー、ブルース、ソウルなどアメリカの黒人音楽と、歌謡曲由来のメロディーを混ぜ合わせたような素朴で優しい楽曲。そして日々の暮らしで沸き上がる様々な感情、または励ましのメッセージを含んだ歌詞が特徴です。こちらも20年以上のキャリアを持つベテランです。