徹夜作業明けに車で会場まで3時間。これほど茨城県民を羨む日はありません。軟弱者な私にとって、まずこのひたちなかに到着するまでがひと苦労を感じたりも。ですがこのひとハードルがなければ、この魔法の体験は得られないのです。 車を降りて、メイン入場口“翼のゲート”までの道中、それまでの疲労感は期待感に変化していきます。なぜなら、道中のすぐ横に、リハーサルやマイクテスト、オケの同期や特殊楽器の調整をするそれぞれの音が、日本最大のフェスが誇るサウンドシステムでこぼれてくるのです。
その迫力は、例えるならまるで神話の巨大生物が繰り出す鋭い爪の一撃を一瞬目にしたような、そんな感覚です。この巨大生物が本気を出して暴れる姿を間もなく目にする、その期待感や緊張感が、疲労感どころではないと感じさせてくれるのです。
翼のゲートがあるT字道路に、各方角からぞくぞくと集まる入場者。彼らも私と同様、道中の疲れを見せますが、美しく威厳を持って迎える“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016”のタイトルを前にすると途端に目の輝きが戻り、口々に叫びます。
「着いた〜!」
「高まる・・・・ディズニーランドより高まる!」
「うわーTシャツ残ってるかなー」
そう。翼のゲートは始まりの魔法をかけられる場所なのです。
早速記念写真を撮ったり、到着を労う乾杯をしたり、これから行われる夢の様な音楽体験への期待に心を踊らせます。手持ちのチケットをリストバンドに交換し、さぁ物語の始まりです。ところが私が細かく描写できるのはここまでです。なぜ?今度はなんの魔法?場内に入ると、その日1日が本当の意味での「あっっ」という間に過ぎてしまい、気が付いたらGRASS STAGEの終演を告げる花火とともに、帰路についています。
「全てのステージを見ることは、事実上できません!」ステージ合間のアナウンスで何度も耳にするこのフレーズ。そんなことは分かっていても、それでも誰々を聞いた後は、急いで次のステージ、数曲聴いたら途中で次のアーティスト。合間10分で腹ごしらえして、おっとトイレもと思ったら並んでる!そんなことをしている間に、一瞬で1日が終わってしまうのです。
アーティストたちが求める音楽の道に終わりがないのと同じに、この日本最大の祭りの究極の楽しみ方は、突き詰めるとゴールがありません。私も自分の順路についてまだまだ見直しの必要性を感じます。そんな試行錯誤の中、人によっては丸4日間音楽漬けでも、まだまだ足りない!もっとこの場所に居たい!帰りたくない!と思ってしまう・・・それがロック・イン・ジャパンの魔法とも言えるかもしれません。
水曜日のカンパネラ美しき森と怪しい妖精
“雪男イエティ”に合わせ、怪しいイエティが登場!新時代のポップアイコンとなった水曜日のカンパネラのコムアイです。笑い溢れる森のパーティーが始まりました。コールアンドレスポンスでも抜群のかけ合いを見せ、水カンワールドが益々拡大したことを感じさせる時間でした。
https://www.youtube.com/watch?v=AVPgxn3xohM
Little Glee Monsterホンモノ志向でなくホンモノへ
初出演のLittle Glee Monsterが、今年新設のHILLSIDE STAGEに登場!若手コーラス・グループだとナメてたら、ヘビーな一撃を与えられますので要注意。BPM真理教の時代に左右されず、古今東西縦横無尽にジャンルや時代をまたいで暴れ回ります。それでいて、ステージ上での複雑にフォーメーションとダンス、緻密に練り込まれたコーラスワークも見せ、その姿はまさに音楽界に現れた新生モンスターです。初見の観客は顔を見合わせ「すご!うま!」と言い合ってました。
https://www.youtube.com/watch?v=wc4TkveHKFI
いきものがかり最美良メロを持つバラードの風
デビュー10年にして初出演のいきものがかり。“じょいふる”や“ブルーバード”で観客をハイテンションにさせるだけでなく、度肝を抜かれたのはバラードです。水野良樹が描くメロディーラインは、切なく締め付けられる繊細な進行をしつつ、甘く温かな郷愁を纏い、さらにまっすぐな唄声の吉岡聖恵がそれを紡ぐ、この最美良メロがいきものがかりの最大の武器だと感じました。この日本一のフェスの日本一のステージに文字通りバラードの風が吹いていく様は、心に染みました。
https://youtu.be/MxG91EIzN3Q?t=30