未だに「演歌歌手」のイメージは日本だけ?アリーナロックの重鎮として本国ではレジェンドとなっているチョー・ヨンピル
2013年のK-POP最大のトピックは、間違いなくチョー・ヨンピルの大復活だ。4月にリリースした、韓国で10年ぶり・通算19枚目となるフルアルバム『Hello』が、25万枚を超えるセールスを記録、同作に収録されているアメリカンロック風の軽快なポップス「Bounce」「Hello」が、主要チャート上位に何週間も入るほどのビッグヒットとなり、全国ツアーはどの会場も即ソールドアウト。そして夏には、「サマーソニック」の兄弟フェス「スーパーソニック」にヘッドライナーとして登場するなど、東方神起、少女時代といった今をときめくアイドルたちと肩を並べる、いや、それ以上の活躍ぶりを見せたのだ。とはいえ、「80年代に人気のあった演歌歌手」というイメージが一般的な日本では、意外に思う人が多いだろう。だが、そうなったのも本人の意思ではなく、韓国でのヒット曲「釜山港へ帰れ」を日本でもやってみたら評判が良かったので、ずっと同じ路線を続けていたら「演歌」にカテゴライズされてしまった、というのが真相のようだ。
チョー・ヨンピルは1968年頃から米軍基地内のクラブをメインに活動を始め、カントリー&ウエスタンのグループやロックバンドのギタリストとして活躍した後、70年代前半にソロに転向。前述の「釜山港へ帰れ」をはじめ、民謡をリメイクした「恨五百年」、150万枚も売れた哀愁のバラード「窓の外の女」、ディスコ歌謡「おかっぱ頭」などを次々とヒットさせて、一躍、国民的人気歌手となった。その後も時代のニーズに応えて、様ざまなタイプの曲を歌ってきたわけだが、数多くの持ち歌の中でたまたま日本でも受けたのが「釜山港へ帰れ」だったのである。
2013年9月28日、私は韓国・水原ワールドカップ競技場で開催された『Hello』発売記念コンサートを観に行った。あいにくの雨だったが、ヒット曲満載の2時間あまりのステージに2万人の観客は大興奮。「旅に出よう」「モナリザ」といったアップテンポの曲で踊りまくり、バラードではサビのところで自然と合唱が始まって、チョー・ヨンピルがギターソロを弾けば、「オッパ(お兄さん)!」と叫ぶ声があちらこちらから聴こえてくる。客層も驚くほど幅広い。ペンライトを激しく振るおばさん集団の横では若い男女がキスをしており、30代と思しきマッチョな男性は激しく腰をふりながら聴いている――。
こんなコンサートができるアーティストが他にいるだろうか。J-POPでは桑田佳祐、矢沢永吉、浜田省吾、CHAGE and ASKA、洋楽ではグレイトフル・デッドあたりが近い存在と言えそうだが、瞬時にして老若男女をひきつける魅力と実力を持っているのは、やはりチョー・ヨンピルしかいないと断言したい。とにかく百聞は一見にしかず。11月7日に東京国際フォーラム ホールAで『Hello』ツアーの東京公演が行われるので、気になった人は足を運んでほしい。日本での新たな伝説の始まりを体験できるはずだ。
【公演情報】
「チョー・ヨンピル“Hello Tour”in Tokyo」
2013年11月7日(木)東京国際フォーラム ホールA 18:30開演/チケット ¥9,450(全席指定)
各プレイガイドにて発売中 (問)クリエイティブマン 03-3499-6669
【リリース情報】『Hello -JAPAN EDITION-』絶賛発売中
初回盤(CD+DVD)¥3,990/通常盤(CD)¥3,150 UNIVERSAL SIGMA