【1:ライブズボラ者こそCDJに行こうby 酒井康平】
こんにちは。ミュージック・ソムリエの酒井康平です。ソムリエなんて言って、さぞかし沢山の音楽を語れるのでしょうとハードルをぐぐっと上げておいて、ライブハウスに足繁く通ったりもせず、1人のアーティストを追いかけたりもしない、ましてや遠征する程の活発さもない、「情報は足で稼げ」という営業マンや就活生とは真逆を生きるライブズボラ者、それが私です。ほとんど知人・友人の口コミやネット情報だけで「音楽通ヅラ」している、もしくは「音楽通ヅラ」したいズボラ者は、私だけではないはず。そんなライブズボラ者に最高の音楽体験をさせてくれる場所、それがCOUNTDOWN JAPAN(以下CDJ)なのです。
CDJは、日本のロックの現在進行形、その年を代表するアーティストに一気に出会えるのが魅力。夏フェスの代名詞ROCK IN JAPAN FESTIVAL(以下RIJF)と比較して、どちらが良いと言えるものではありませんが、都内からアクセスし易い幕張メッセという会場で、天候に左右されずに体験できるのは大きなメリットです。それは音響面でも同様で、天候に左右されず、13年間の長い歴史の中でスタッフが試行錯誤し、年々アップデートされた最高音質でライブを楽しめます。
知らなかったアーティストのファンになったり、好きなアーティストを一層好きになることができるのがCDJです。今回はアーティストレポートと共に、もしCDJだけでなく音楽フェスに参加したことがない「参加してみたい面倒くさい」という乙女ゴコロを持つ音楽ファンの背中を少しだけでも押せたら、と思ってキーボードを叩いているわけでございます。
どんなステージがあるの?どの場所が聴き易いの?
私が初めて参加したCDJ13/14の時には、誰を見て良いのか全く分からず、友人のCMディレクターにアドバイスを仰ぎCDJを含めた日本の音楽フェスの歴史や必見アーティストなんかを伝授してもらいながらも、結局一番大きな会場EARTH STAGEに張り付いていました。今となってはそれもCDJビギナーの1つの正解なように感じます。EARTH STAGEや次に大きいGALAXY STAGEは、その巨大な会場が似合うビッグネームが登場しますので、初心者にはとっかかり易いのです。次世代のエースがギラギラと演奏するCOSMO STAGEやMOON STAGEは玄人好みで、アリーナと2F座席を持つASTRO ARENAではエレクトロやDJ、アイドルなどのパフォーマンスで映えます。
では、ライブズボラ者にとって、各ステージのどこで聴くのが良いのでしょう?元々慣れてもいない客席最前線で、大騒ぎしたり、手を大きく振りかざしたりという文化がない私のような人間には、クラシックのコンサートの配席からお知恵を拝借します。中央の少し後方のエリアは、S席、A席と呼ばれ価格も高価で、当然ステージが見易い上に、しっかりと耳を傾けられます。客席のどの位置に居ても良い音質で聴けるように音響スタッフが工夫に工夫を凝らしているのは知りつつも、この場所はやはり高低音バランスの良いスピーカー配置で、安定してアーティスト側の意図した音質を感じられるのではないかと、贅沢な気持ちになります。また、何と言っても突如発生するサークルの中に入ってしまい恐怖したり、ステージに夢中なヤングガールの肘打ちをお見舞いいただくこともありません。そんな訳で特殊な構造を持つASTRO ARENAはひとまず置いておいて、それ以外のほとんどステージで私がオススメするのは、中央の後方気味のエリアです。
高速音楽の主流化、されど求むは楽曲構成力
音の速さをBPMと言いますが、クラシック音楽や、かつて私の青春時代を過ごした90年代から00年代までのポップスは「BPM80までがゆっくりしっとり、BPM120からが速くて元気」という目安があったと思います。しかし00年代からビジュアルバンドがBPM200超えを楽曲のウリにしたり、電波ソングを武器にアニソンや女性アイドルグループがライブやイベントで熱狂的トランス状態を作り出すことに成功しました。CDでもなく音楽配信でもなく、フェスやライブが音楽ビジネスの中心となった10年代のJ-POPは、会場全員が「オイ!オイ!」と叫んで盛り上がる一体感を大事にすることで、全体的に楽曲自体のBPMが加速していったのかもしれません。
とは言え私が音楽を楽しむ上で、盛り上がってるかどうかを最重要視はしません。そりゃ、盛り上がっているステージは、楽しみ方を周りが教えてくれるので楽しいです。ですが、振り返って満足度が高かったのは、工夫を凝らしたアレンジや、ひと味変わった世界観、そんな楽曲構成力を持つアーティストでした。ノリも良いけどじっくり耳を傾けると、「なるほど!」と唸ってしまうような。
それは高速楽曲を武器とするバンドがダメで、奇をてらったアイドルやパフォーマンスアーティストが良いという話ではなく、ジャンルは問わずキラリと光る独自の世界で観客に喜怒哀楽さまざまな感情を与えてくれるアーティストのステージに、私は感動します。次ページは、そんなとびきりの音楽のスペシャリテで至福の時間を提供してくれたアーティストを、ご紹介したいと思います。