Drop’s Live

2013年12月21日/大阪 心斎橋 Drop


開演前のブルーズが流れる中、予定より10分遅れでヴォーカルを除く4人が登場し、彼女らの演奏でブルーズをかき消した。続いて花柄のワンピースのガーリーなスタイルで登場したヴォーカルの中野ミホが、その圧倒的な歌唱力でブルーズロックを歌いあげ、会場をその渦に巻き込んでゆく。

「黄信号だけど、このまま突っ走ります」と言った後も息をもつかさぬ勢いで、ライブ後半までMCらしいMCもないまま駆け抜けた。

Drop’sは、札幌市出身の中野ミホ(vo. guitar)荒谷朋美(guitar)小田満美子(bass)石橋わか乃(keyboard)奥山レイカ(drums)による、若干20歳の女子5人組。高校1年生の時に、同じ高校の軽音楽部の同級生で結成し、高校3年生で1stアルバム「Drop’s」をリリース。そして、2013年3月にミニアルバム「LOOKING FOR」をリリースした後、9月に初のフルアルバム「DAWN SIGNALS」をキングレコードよりリリース。

DAWN SIGNALS~「夜明けの信号」の意味にちなんで、今回は札幌「turned RED」東京「turned BLUE」そして大阪「turned YELLOW」と名付けて、3か所でワンマンライブが行われた。

何よりもまず、中野ミホのベビーフェイスからは想像できない少しハスキーで野太い声に度肝を抜かれる。そしてパンチのあるドラムが、グルーヴィなベースが、それにひずんだギターがうねり、強いヴォーカルに負けない分厚い演奏でブルーズロックを掻き鳴らす。

ステージの少し後ろで、ショートカットにハットのスタイルが印象的な石橋わか乃のキーボードが、時にはブルージーなオルガンで、またはジャズテイストのピアノで、彼女らのブルーズに濃度と厚みを加えている。

Drop’sの音の根底に流れるのは、まぎれもなくブルーズである。

それもTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTや、エレファント・カシマシを彷彿させる硬派なブルーズロックである。彼らの音は彼女達も好んで聴いていたと言うが、今までのガールズ・バンドと明らかに違うところは、「女子のフィルターがかかっていない」と感じさせるほどの男らしさだ。

大型バスやトレーラーを自在に操る女子、男に混じって鳶職人として汗を流す女子、漁業や林業にまで、今まで男一色だった職業に女子がいわゆる「女の子」としてではなく本格的に参入しつつある昨今、ようやく本物のブルーズを鳴らす女子が現れたのも不思議ではないのかもしれない。

1990年代初頭のバンドブームにあった「荒削りだけど勢いがある」、そんなバンドが久しぶりに表れたと感じさせてくれる印象だ。

12曲を演奏し終えたところで、初々しさの感じられるmcが入り、「このワンマンライブでは1曲カヴァーを演っています」と言って、演奏したのがユーミンの「卒業写真」。少し意外な選曲だと感じたが、幅の広さをアピールするのにはよかったのではないだろうか。

この後バラードやワルツを演奏して、シングル曲「太陽」で盛り上がってラストを飾る。

アンコール3曲の後には、まだ鳴りやまない拍手に促されて、最後にサービスでもう1曲「コーク・エイジ」で観客を沸点に到達させて幕引きとなった。

今回はニューアルバムに収録されている楽曲を中心に構成されたライブであり、Drop’sの骨太なブルーズロックが中心に据えられたかなり痛快なライブだった。

このまま彼女たちのブルーズが薄れぬよう願いつつ、男前度No.1のDrop’sは今後要注目のバンドであることには間違いないと確信した。

SET LIST(Drop’s Live @ 大阪 心斎橋 Drop 2013.12.21)

0. intro
1. RED IDENTITY BAND
2. JET SPARK
3. STRANGE BIRD
4. DIRTY Smoke
5. 木曜日の雨のブルース
6. カーテン
7. トラッシュ・アウト
8. 黒いシャツ
9. 真夜中の時限爆弾
10. ダンス・ダンス・ブラックホール
11. 泥んこベイビー
12. 夕やけ
13. 卒業写真
14. 星の恋人
15. カルーセル・ワルツ
16. 太陽

EN.
17. やさしさ
18. さらば青春
19. 雨粒と街
(20. コーク・エイジ)

【Drop’s official web】http://drops-official.com/