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マニアックでメロウな音を奏でる注目の男女ユニット、ヘウレーカ-HEUREKA-

TEXT:まつもとたくお
2014/06/09

ヘウレーカ-HEUREKA-ここ数年の日本のインディーズは、すぐにメジャーに行ってもおかしくない実力派・個性派に出会う機会が多くなってきた。2012年から活動を始めた大比良瑞希(ボーカル&ギター)と古澤敦郎(ベース)のユニット=ヘウレーカもそのひとつ。フレンチポップにカントリー風味を加えたり、XTCのような変わったアレンジを試みたりと、洋楽マニアがニヤリとしそうな技を駆使したカラフルな音楽を得意とするが、小難しいところは一切なし。むしろ大比良の作る楽曲はどれも人懐こくて、男女を問わず幅広い世代に受けそうだ。J-POPの未来を担う二人に、過去から現在、これからのことを率直に語ってもらった。


――幼少のときから音楽を聴いていたのですか?

大比良 私の両親が松任谷由実さんの音楽が大好きで、車の運転中よく流していたのが記憶に残っていますね。あとはビーチボーイズやビートルズ、カーペンターズとか。そのへんは小学生時代から聴いていたと思います。

――ミュージシャンになろうと思ったのもその時期ですか?

大比良 いいえ、それはなかったです。でも楽器は小さいときからやっていました。最初はピアノを習って、その次はエレクトーン。でも全然弾けません(笑)。音楽に熱中し始めたのは、中学校に入って同級生とバンドを組んでからです。

――で、ロック&ポップスに目覚めたと。

大比良 はい。あと、当時は数学の塾に通っていたんですが、そこで出会った高校生のお兄さんたちの影響も大きかったです。私がテストをやっている横で、グリーンデイとかアヴリル・ラヴィーンをガンガンかけていました。彼らに洋楽やギターを教えてもらいました。

――最初はどのような音楽を演奏していたのですか?

大比良 カバー曲がメインでしたね。学校の文化祭に出るために組んだので、みんなを楽しませるために人気のあるものを…。例えば、aiko、Do As Infinity、JUDY AND MARY、大塚愛、サザン、PUFFYとか。当時はギターのみでボーカルはやっていませんでした。

――そんなのをやっていたとは意外でした。

大比良 でもやってみると中学生には意外と難しくって、結構グジャグジャだったような気がします(笑)

――オリジナルをやるようになったのは?

大比良 高校に入ってからです。いざ曲を作ってみると自分で歌ったほうが早いかもって思い始めて、それで歌うようになりました。

――大比良さんの曲を初めて聴いたとき、音の引き出しが非常に多いなと思いました。

大比良 両親が経営している会社のお店でBGMの選曲をしているんです。この作業を通して、ボサノバやジャズ、ワールドミュージックなど、自分がそれまで聴いてきたものとは違うジャンルを意識的に聴くようになったのが大きいのかなという気がします。

――それで音の引き出しが増えた、と。

大比良 ええ。あと、大学のゼミの先生がアンビエントやエレクトロニカが好きで。その影響もあります。

――古澤敦郎さんと知り合ったのは大学時代ですか?

大比良 大学1年のときです。それから紆余曲折あって、ヘウレーカというユニットとして活動を始めたのは2012年頃です。

古澤 当初はもうひとりギタリストがいて3人組だったんです。

大比良 最初は普通にバンド編成にしようと考えていました。でも時期的に就職する仲間が多くて、なかなかメンバーが集まらなくて。そんな経緯もあって、知り合いのミュージシャンにサポートしてもらいながら、この形態でいこうと決めました。音楽の方向性・やり方を考えていくには、二人のほうがやりやすいのかなと今では思っています。

――これまでにCDを2枚出していますが、それぞれ音の雰囲気が違いますよね。

大比良 デビュー作『1』(2012年8月31日リリース)の頃は、ザーズ(フランスの女性SSW)みたいな曲調が好きだったんです。

古澤 当時ヘウレーカに在籍していたギタリストが、ブルース系の刻んでいく弾き方が好きでした。彼のプレイと合わさって出来上がった音という気もします。

大比良 2枚目のほうはダークでバンドっぽい音になっています。録音するときに聴いた音楽に影響されることもありますが、ベーシックな部分は常に同じだと思っています。

――2枚目の『falling』(2013年7月8日リリース)ですが、アレンジがこれ以上のものはないと思うほど仕上がっている気がしました。特に「つまさき」は完璧だと思いました。

大比良 「つまさき」に関しては、悩まないで録音できたほうですかね。歌詞にしても構成にしても、偶然あのようになった感じです。それと鍵盤で参加してくださった杉浦秀明さん。彼と波長が合ったということもプラスに作用したはずです。



――古澤さんはベースを弾く以外にも様ざまな面で大比良さんをサポートしているそうですね。

古澤 ええ。デモを作るときに彼女の歌とギターにバックの音を足したり、曲を作る上でのアドバイスもしています。あとはオフィシャルホームページの制作、ジャケット撮影、PV撮影・制作も担当しています。

――今後の活動について教えてください。

大比良 とにかく今まで以上に良い作品を生み出していきたいです。それは音楽をベースにしたアートというか、もっと広がりのあるもの。例えばMP3が当たり前の時代だけど、あえてCDを出して、思わず手に取りたくなるような、聴いてみたくなるようなデザインのジャケットにして。そういうことを積極的にやってみたいと思っています。

――ヘウレーカの夢・目標は何ですか?

古澤 現在の音楽シーンはあまり良い状況ではないですよね。ヘウレーカがそんな流れを変える存在になれるようにがんばりたいと思います。

――起爆剤になりたいということですね。

古澤 ええ。今の人たちは昔に比べて音楽を聴かなくなっている気がします。良い曲を作っている人がたくさんいるのに、あまり知られることなく終わってしまう。良い曲さえ作っていれば、ちゃんと認められて生活できるような環境になってほしいと思います。

大比良 音楽だけじゃなく、映像やファッションの要素を取り入れた総合的なもの、サブカルチャー的な要素・仕掛けが多いものを好む人はたくさんいるはずです。その方面にも力を入れていって、音楽を聴く人が増えるきっかけを作っていきたいです。

[2014年5月3日、新宿 カフェ・ミヤマで]



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