John Martyn

Bless The Weather

ソウルフル。そしてダークにしてファンタスティック。 英SSWの残した名盤

寒い冬から春に移ろう今日この頃。弾き語りのシンガーソングライターによるアルバムがBGMとして、よく似合います。王道はジェイムス・テイラーやキャロル・キングを始めとするアメリカ勢ですが、イギリス勢も素晴らしい。例えばエルトン・ジョン、キャット・スティーヴンス、ギルバート・オサリバン、ドノヴァンといった面々。そしてジョン・マーティン。彼の作品群もこんな季節にピッタリです。

ジョン・マーティンは、独自の個性を確立すべく様々な音楽性に挑戦したミュージシャン。時代によって異なる魅力が発揮して来た彼ですが、芯となる彼自身の個性は変わりません。それは温もりを感じさせつつも感情を抑えたヴォーカルと、残響が美しい室内楽的なフィンガー・ピッキング・ギター。今回は彼の代表作の一枚とされる『Bless The Weather』を取り上げます。

67年にデビューした彼はボブ・ディランへの憧れを発露させたフォーク期を経て、70年に夫婦デュオを結成。ウッドストック録音を敢行し、南部音楽に接近。英米折衷フォークを生み出しました。そして71年再び、ソロとして発表したのが『Bless The Weather』です。

本作はアメリカ西海岸のSSWブームに呼応して制作されており、ソウルフルな音楽性を特徴としています。前述の通り英国然とした個性を持つ彼自身の素養に加え、一部楽曲での大胆なギター・エフェクトの導入、アフリカンなリズムを刻むパーカッション、ジャジーなベースといったアレンジにより、本場では味わえない暗く幻想的なサウンドとなっているところが聴きどころでしょう。アルバムは弾き語りによる演奏を軸とした、一音一音を大切にする音作りがされています。曲によってはバンド編成になったり、更にピアノやパーカッションを加わったりしていますが、総じてシンプルな仕上がり。隙間を残し、空間を生み出しているアンサンブルと言えます。

John Martyn – Go Easy (1971)

アルバムのオープニング・ナンバー。儚げでどこか投げやりな歌声と、幽玄に響くアコースティック・ギターの調べ。弾き語りというスタイルこそ、ジョン・マーティンに触れるのに最適と言えるでしょう。これがイギリス流の「Go Easy」なのだ。

2009年1月に亡くなってしまった彼ですが、この記事で聴き始めてくれる音楽ファンが増えればうれしいです。

ジョン・マーティンの再来として筆者が猛プッシュしているミュージシャン、ピート・ロウの記事はこちら。