来年4月の本イベントに先駆けて開催されたトークイベント
RECORD STORE DAY JAPAN SPECIAL TALK 〜アナログレコードの魅力を語る〜
アメリカを中心に世界中に広がりつつあるアナログ文化の再ブーム。その火付け役となったのは、全米の700を超え、海外に数百を数えるレコードショップとアーティストが一体となって近所のレコードショップに行き、 CDやアナログレコードを手にする面白さや音楽の楽しさを共有する、年に一度の祭典RECORD STORE DAYである。限定盤のアナログレコードやCD、グッズなどがリリースされ、多くの超大物アーティストが全米各地、各国のレコード店でインストア・ライブを行うなど年々その盛り上がりは加熱するばかりだ。
今回RECORD STORE DAY JAPANは来年4月に先駆けて『RECORD STORE DAY JAPAN SPECIAL TALK〜アナログレコードの魅力を語る〜』というトークイベントを開催、2014年のRSDアンバサダーを務めるアジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤正文さんと、多方面で活躍するDJ Mayuさん迎えてアナログ・レコードへの想いをオススメ作品と共に語って貰った。
【トークイベントのために機材提供して頂いたヨシノトレーディングさんのご挨拶と機材の説明】
今、海外ではアナログ盤がブームになっています。特に若者を中心として、アナログ盤が買い求められています。今日はその辺りも色々と喋って頂ければと思っています。ヨシノトレーディングは主に再生機アナログを中心とした機材をヨーロッパ、イギリスやドイツから輸入して販売しております。真空管を中心としたアンプ、アナログを再生するプレイヤー、プレイヤーというくらいですから、まさに楽器で再生するとどういう響きに聴こえるのか、若い人達の方が耳がいいですから若い方がどういう反応をされるのか、とても興味があります。普段はヘッドホンを主として音楽を聴かれていると思いますが、今日は是非、プレイヤーが奏で、スピーカーから皆様の耳に届く空気を伝わって届く音楽を味わって頂ければと思います。
レコードプレイヤーはClearaudioTT3というリニアトラッキングアームという最新のものです。外側から内側へ針が一直線に動く形式です。ここから、EAR社のプリアンプと言われる装置なのですが、このアンプの設計者、ティム・パラヴィッチーニ氏、今日この会場にも来ているのですが、世界中でキング・オブ・アナログと呼ばれています。リンゴ・スター、ポール・マッカートニー、ピンクフロイド、ケイト・ブッシュ、などが彼のアンプを気に入って使用しています。このアンプからスピーカーに繋がれ、皆様の耳に空気が伝わって届きます。その豊かな音の響きを今日は味わって頂きたいと思います。それではよろしくお願い致します。
【当日の機材】
プリアンプ :EAR 912
パワーアンプ :EAR 509 II
ターンテーブル&アーム:Nottingham Dais
カートリッジ :Clearaudio Stradivari
ターンテーブル:Clearaudio Innovation Compact
アーム:Clearaudio TT3
カートリッジ :Clearaudio Concerto
スピーカー :Diapason Astera
2014年のRSDアンバサダーを務めるアジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤正文
後藤正文(以下敬称略):今日は有り難う御座います。なんか不思議な場所で、不思議なイベントで、高そうな機材に囲まれて、僕らでもこんなアンプ持ってないですね、欲しいですけど。Mayu(以下敬称略):欲しいですよね。
後藤:さっき訊いたのですが、このスピーカー120万円するそうですね。ちょっと凹みますよね。どこまでこういうオーディオ機材って揃えればいいのかきりがないですよね、Mayuちゃんは代々木のビレッジで回してるんですよね?知ってます?代々木のビレッジ。
Mayu:小林武史さんのお店なんですけど、そこのオーディオシステムがすごく高級で、ゴッチさんもゲストセレクターで回しにきてくださったんですけれど。やっぱり手は届かないですね。
後藤:東京でいい音で聴きたい時は代々木ビレッジに行くといいですよ、ビール一杯で結構粘ってても何時間も居られるし。Mayuちゃんは火曜日に回してるんだよね?
Mayu:第2第4の火曜日に回してます。おもしろかったですよね。ゴッチさんのセレクション。
後藤:青春の90年代特集でたくさんかけましたね。ターンテーブルってDJのヤツは止められるんですけど、ビレッジのターンテーブルってずっと回りっぱなしで・・・
Mayu:指で止めちゃダメなんですよね。ここに今日ある機材もそうだと思うんですけど。
後藤:だからそろそろ終わりだろうというタイミングを見計らって、二つのターンテーブル両方で再生されているので、終わりそうになったら音を移していくという。ビレッジ、ホント音良いし、いわゆるクラブじゃないので、煙草で煙たくないし、不良っぽさは全くないお店なんだよね。
Mayu:クラブが苦手な人にも居心地いい空間です。
後藤:むしろ短パンでは行けない感じで、ちょっとお洒落していくといい感じですね。
Mayu:デートとかで行くといいですよね。
後藤:レストランもあってね。ええと、まあこんな雰囲気で今日は進めていきますが。
Mayu:なんかラジオみたいですね。
後藤:まさか自分が司会するとは思っていなかったので。一応メールで送られてきた内容見て、じゃあ今日はこんな話しようとか考えてはいたんですけど。
Mayu:今は覚えていないと。
後藤:まったく飛びましたね。ひとつだけ、一番最初に買ったレコードは何ですか?って書かれていたのでそれだけは覚えていて…これね、Nirvanaの『MTV Unplugged in New York』MTVで放送されたアコースティックライブ盤です。これDVDでも出ているし、勿論CDでも発売されているのだけど、なんでこれ買ったかって実は覚えて無くて・・・。
Mayu:うふふ。
後藤:そんなに好きだったのか自分でも解らないんですけど、Nirvanaっていわゆる90年代のオルタナティブロック、グランジっていう音楽があって、もうそれこそ90年代グランジを象徴するアイコンですね。
Mayu:もはや神みたいな。
後藤:そう、ちなみにボーカルのカートコバーンはもう亡くなりました。当時はNirvanaの事を友達の前でちょっと言うと大変な事になっちゃう。今で言うならば炎上?
Mayu:あははは。
後藤:みんな一言、言いたい。僕はなんというかひねくれ者なので、みんながこぞって聴いていると、なんか聴きたくなくて、好きじゃなかったんですよね。東京に来て初めてレコードプレイヤー買ったのですけど、僕初めて買ったレコードプレイヤーって井の頭公園の青空市みたいな所でホームレスの人から買ったんですよ。
Mayu:ええっ!?(笑)絶対故障してますよね。
後藤:ガラクタ市みたいなところで、スピーカーとセットで買ったんです。でもね、当時なにがダメだったかって知識が無いから、アンプが必要だって知らなくて、繋いでみたら蚊が鳴く様な音で(場内、笑い)。げっ小さい!!と思ってなんじゃこりゃ・・・解決したのは随分あとで、ああアンプ無いと鳴らないんだって。
Mayu:私もターンテーブル買ったら聴けると思ったんですよ。で、スピーカーとどう繋ぐのか分からなくて、でミキサー買ったんです。でも、一つずつ知っていくのって愉しくて。
後藤:アンプですよね、大事なのは。最近のミキサーはアンプ内蔵で、ミキサーの中で信号を変換してスピーカーに送れるんですけど。結局ちゃんとレコードプレイヤーで音聴けるようになったのは随分後で、ちゃんとしたプレイヤーを買ってからですね。それ以前のアナログは結構処分してしまったのだけど、なぜかこの盤は捨てられなくて残しといたのです。Nirvanaの「MTV Unplugged in New York」聴いてみたいと思います。A面の二曲目「Come As You Are」
Mayu:どこで買ったんですか?
後藤:これは多分吉祥寺のレコファン。
Mayu:それはホームレスのおじさんからじゃなく?(笑)
後藤:うん、ちなみにホームレスのおじさんから買ったのは確かスピーカー付きで5000円。
Mayu:えっ?それって高いのか安いのか判らない。微妙(笑)
後藤:それをかついで中央線で立川まで帰ったんですけど、膝の上にターンテーブル乗っけて、その上にスピーカー置いて。
Mayu:明らかに電気屋さんから買ってないのがバレバレですよね。
後藤:うん、怪しい奴ですよね。拾ったのか盗んできたのか、みたいな。
Mayu:うふふふ。
後藤:ああ、すごい久々に聴くかも。音大丈夫かな・・・。
【Nirvanaの「MTV Unplugged in New York」よりA面二曲目「Come As You Are」】
後藤:はい、ええと僕のレコードの保存状態が非常に悪い、という事が判明してしまいましたけど。
Mayu:なんか試されてるみたいで怖い(笑い)ドキドキしてきた。
後藤:家で聴いた時はこんなパチパチノイズ入ってたかな。でも、とても素晴らしいスピーカーだと言う事はわかりますね。カートコバーンの声が凄い立体的で、今まで聴いた事無いって言うか。
Mayu:なんか、観客がすぐそこに居るみたいな感じしました。
後藤:これ家の安いスピーカーで聴くともっとペラッペラで・・・
Mayu:うん、わかるわかる。
後藤:でも、人の声に凹凸がある。この盤の状態がそんなに良くもないのに。
Mayu:なんかいろんな音を拾ってくる感じが、すごい。
後藤:ショックだね。生々しいね、なんかやべえ(笑い)。地デジになってから好きなアイドル観て、あれっ?みたいな。このシステム、家にあったら外に出かけなくなるよ。まずいよ、引き蘢るよ。いや感動した。Mayuちゃん、次何行きましょうか。
Mayu:一番傷の少ないのを・・・
後藤:いや、思い入れで選ぼうよ、ここは。
Mayu:えーと、一番最近に買ったのですが、ニューヨークにDFAというレーベルがあるのですが、LCD SoundsystemというバンドのボーカルのJames Murphyがレーベルオーナーをしているんです。大好なDJで。で彼がカナダのArcade Fireというバンドのプロデュースを今回していて、David Bowieをフューチャーして話題になっているのですが、それがアナログでも発売される事になり、これが日本では一店舗しか扱うレコード屋さんが無くて、私が良く行くレコード屋さんなのですが、たまたまそこにいたんですね。
後藤:これ、自慢ですよ皆さん。(笑)
Mayu:いや、これホント感動なんですよ、あれ、私だけかな(笑)。九月九日の日本時間夜九時に発売するってジャケットに、記されて・・・あれっ無いかな。(9/9/9という暗号の様な記述がある)音がカッコいいのでこれをお願いします。タイトルは「Reflektor」です。David Bowieがフューチャーされています。
後藤:最近こういう限定盤が増えていて、多分日本でもこれから増えると思うのですが、みんなレコードプレイヤー買った方がいいよ。
Mayu:今、一万円くらいで買えますしね。
後藤:うーん、もうちょっと頑張った方がいいかも。結局安物買いの銭失いになっちゃうし。まあさすがにいきなりここに行くって言うのは無いけど(後ろの機材を眺めながら)
【Arcade Fire『Reflektor』】
Mayu:すごい・・・。
後藤:いいね、低音がすごいよね。レコードって高音部、耳が痛くならないですよね。デジタルだと分離が良すぎてすごくなんかパキパキしてしまうのだけれど、アナログって溶け込む?というか、Foo FightersのDave Grohlがそれを「メルト」って表現してるけど。
Mayu:いい表現ですね。すごくわかる、その感じ。
後藤:今のReflektorもすごく良かったよね。いい音だなー。これこの音で聴いてたら絶対に外に出かけないですよね。
Mayu:もうクラブとか行きたくなくなっちゃうかも。行く必要ないですよね。
後藤:僕らが音楽作っている環境と音楽を聴く環境って違うと思うのですね。レコーディングの時って、かなりフラットなスピーカーとかヘッドホンで聴くんですけど、誰もが高級オーディオ持っている訳じゃないですからね。イヤホンで聴く環境とか、そういう事を考えながら創るわけですよ。じゃあ、続けて聴いてもいい?これもライブ盤なんだけどWILCOの「Misunderstood」
Mayu:ライブ盤ていいオーディオで聴くと本当にその場に居るような感じになるんですねー。
後藤:これ最後まで聴いてもいい?最後の臨場感が半端無いんだよね。CDで聴くのとどれくらい違うのか、とても興味有る。
【WILCOの「Misunderstood」】
後藤:やばい・・・凄い臨場感
Mayu:ラストが凄いってわかった。
後藤:CDで聴いてももちろんいいんだけれど、レコードでこの音量で聴くと、なんかライブに来ちゃった感じが・・・。
Mayu:うん、ライブ会場にいましたよね、今。
後藤:これがやっぱり大きな魅力、mp3じゃ味わえない。なんか、レコードに向き合って針落とすってフェチっていうか、なにかの儀式みたいなね。
Mayu:ウチラだけですかね(笑)
後藤:他人に話すとめんどくさっとか思われちゃうかもしれないけれど、それが好きだし、感動は大きいしね、まあ好きなんだね。
Mayu:始めのプチプチって音も含めてね。
後藤:これがレコーディングアートの醍醐味っていうか、音質や音像感に拘れるんだよね、アナログって。多分、いまみんな聴いてもらって判ってもらえたと思うんだけど、ちょっとすごくないですか?(会場、うなづく姿多数)
Mayu:やっぱりその場に居る臨場感ってレコードだから感じる。
後藤:今、ライブ盤また見直されてきていますしね。ま、ただこのシステムがとてもいいってこともあるんだけどねー(笑)
Mayu:家に帰ってもう一度聴いたら、あれ?ってなるかも(笑)
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