■踊れるミディアムテンポシティーポップ Awesome City Club
次世代シティーポップを担うグループがBUZZ STAGEに現れました。Awesome City Clubは骨格ある力強さと繊細さを併せ持つ男性と、キュートなルックスとオクターブ上の澄んだ唄声の女性によるツインボーカルが特徴。その音楽は歌詞やメッセージ性より、ハッピーな感覚だけを受け取るもので、気が付けば私は初めて聴く彼らの音楽を、昔から知っているように体を横に揺らしていました。オシャレなファンクリズムと漂うエレクトロ感と美メロに会場が酔いしれました。前列4名が横1列に並ぶ配置も美しいです。今年デビューの混成5人組ACC、今後彼らが生み出した架空のシティーはどんな発展をしていくのか楽しみでなりません。
■志磨遼平ワールド全開!ドレスコーズ
暑さのピークも過ぎ、夕方に向かって日が傾き始めようとする時間、観覧車のそばにあるPARK STAGEでは、ドレスコーズのサウンドチェックが行われていました。そこにいたのは、なんとOKAMOTO’Sのメンバー全員。一体どういうことだ?と思いながら、本番を待つと、志磨遼平とバックバンドとしてOKAMOTO’Sという、なんとも豪華な編成で展開されるドレスコーズのライブが始まりました。しかも、1曲目は、椎名林檎の「丸の内サディスティック」!伸びのある心地良いバンドサウンドに乗せて、志磨遼平の歌声が響くステージには、平和でのんびりとした時間が流れていました。
PARK STAGEは、メインステージにあたるGRASS STAGEに向かう道の途中にある場所。16時を過ぎた頃にはあちこちに木陰も出来、小腹を満たす食事をしながらライブが楽しめる、さながら秘密基地のような雰囲気があります。志磨遼平とOKAMOTO’S編成のドレスコーズというスペシャル感あふれるライブには、まさに打ってつけ。会場にいる誰もが、ニヤリとしながらライブを楽しみました。
ライブでは、「コミック・ジェネレイション」や「ビューティフル」など、毛皮のマリーズで発表した曲も繰り出し、ピースフルだけど熱量のこもった志磨遼平の世界が次々と広がっていきました。会場にいる誰もが志磨遼平に惹きこまれ、彼の一挙手一投足を見つめながら、気付けば一緒に歌う。一体感というよりも、志磨遼平の作り出す世界に魅了され続ける時間でした。本当にあっという間に時間は経ち、ステージは終了。次は一体どんな展開になるのか、楽しみで仕方がないドレスコーズのステージでした。
■ひたちなかに女王降臨 椎名林檎
この時間をどんなに待っていたか・・・。会場最大規模のステージ、GRASS STAGEに続々と集まった人たち誰もが、同じ思いを抱いてステージを注視していました。NEXT ARTISTとモニターに、その名前が表示されただけで湧き上がる歓声。ついに、椎名林檎が登場。
ひざ丈の白いレースのワンピースに、白いレースの日傘、15センチくらいの赤いピンヒールと同じ赤いリボン、と貴婦人のような出で立ちで登場した彼女の姿に、息を飲みました。ここまで耽美という言葉が似合う人はいない。
「丸の内サディスティック」「歌舞伎町の女王」と、10代で発表した曲を、歳を重ねてこんなに艶っぽくそして、情感を籠って歌う姿に、ただただ敬服。目の前で起こっていることが、本当に現実なのか?何度も自分の顔を叩いて確かめたくなるような、夢のようなステージでした。向井秀徳を迎え入れての「神様、仏様」があり、浮雲と共に「長く短い祭り」を披露・・・。この時、2人が持っていたマイクが、アイスの形!なんともお茶目で可愛い演出もありと、フェス会場とは思えない数々のパフォーマンスに茫然。
もはやキツネに摘ままれたような気分で、食い入るように見たステージのラストは、「カリソメ乙女」。その瞬間、清楚なワンピースから一転して、鮮やかなブルーのレオタード姿に!最後の最後まで、こんなにも私たちを楽しませてくれるのか・・・!!思わず、歓声とも悲鳴とも分からない声を上げてしまったのは、言うまでもありません。ステージを去った後も、ひたちなかに降臨した女王の姿を、いつまでもいつまでも見送り、しばらくの間、その場から動けなくなった、椎名林檎の圧巻パフォーマンスでした。
■摩訶不思議なチャームに中毒者続出 水曜日のカンパネラ
「かぶって 脱いで 履いて 巻いて 留めて 全〜部、入札!」
近年まれに見るインパクトのヤフオク!CMで、認知度ストック高の水曜日のカンパネラがROCK IN JAPANに初登場しました。そのステージに訪れた観客の頭上には(可愛い?変態?楽しい?可笑しい?)沢山の「?」マークが浮遊します。初めて体験する水カンワールド、コムアイはゆる早ラップで私たちを置き去りかと思いきや、気づけば彼女の独自の時間軸に私たちは乗せられてしまうマジックです。ライブ終了後の観客は、皆ニヤニヤしながら会場を後にしていました。
■新プロジェクトの細美武士は楽しげ MONOEYES
私が抱く現在の細美武士は、the HIATSUでのキリキリと鋭利に尖った、命を削るほどに繊細な音楽性の印象です。ですが初登場の新プロジェクト、MONOEYESでの彼は一直線で楽しげ、安易に言うならthe HIATUSが陰でMONOEYESが陽のようです。また、休止中のELLEGARDEN時代のテイストも感じます。セッションする声部1つ1つが重なる度に幸せなMONOEYESメンバーたち、観客は呼応して歓喜の大合唱を響かせ、真夏のロックフェスらしい熱くも爽やかな風のようにLAKE STAGEを駆け抜けていきました。
■真摯にリズムを刻む姿が胸を打つ変態パンティー モーモールルギャバン
このステージSOUND OF FORESTの魅力は、森に囲まれていることの景観と音響ではないでしょうか。3日目トリとして現れたのはさぞかし爽やかなネイチャーポップバンド・・・かと思いきや、黄金のパンツ一丁、赤ネクタイ付きで現れたゲイリー・ビッチェ率いるモーモールルギャバン。会場にいる誰もが感じるゲイリーの魅力は、この変態の姿かたち、ではなく一心不乱にリズムを打ち込みシャウトする、まるで修行僧のようなその姿に胸を打たれるのです。また、微妙なピッチで「ドレミ」上に乗るか乗らないかの咆哮と、こじれた愛情のリリックが私たちの心に突き刺さります。神聖な森のステージで、出演したどのアーティストより汚らしく、美しいパフォーマンスをしたモーモールルギャバンに最大級の賛辞を送ります。
■もはや事件、アイドルの模範とすべきスタイル でんぱ組.inc
でんぱ組.incのステージを見た人たちの中で「彼女たちより盛り上がっていたステージを教えてくれ」と言われたら、答えに困ってしまうのではありませんか。ギュウギュウに埋めたLAKEステージの会場を完全に一体としてタオルを回す、 この現象をもはや事件と言わずして何と言うか。巨大生物のような大きなうねりと化したステージの正体を探ってみたいと思います。
なぜでんぱ組.incのステージにこんなにノれるのか、私は3つの勝因を見つけました。まずは「音楽性」。俗に言う“電波ソング”は高速BPMで著しい音の跳躍で、さながらジェットコースターのような激しい仕上がりとなります。そして2つ目がでんでんバンドの「超絶技巧の生演奏」。この電波ソングを生演奏するのは大変に難しいのですが、さらりとスタイリッシュに、アツく構築して援護する彼らの働きで、カラオケにはないグルーヴが生み出されています。そして3つ目が「メンバーの個性」。メンバーそれぞれの独自の活動が徐々に浸透し始め、この6色が一層鮮やかにでんぱ組.incとしての輝きを放っていました。この3つが相乗効果で魅力を最大限に高め合い、真夏のフェスのアツさにフィットしたのではないでしょうか。
他のアイドルグループも、生演奏でこそ映える楽曲を多く持つグループが多いはずなので、このスタイルの導入を検討してみて欲しいです。
石井由紀子(ミュージックソムリエ)
胎教はTHE BEATLESという、生まれる前からロック好きのフリーアナウンサー。ロックキッズを経て、今はロックレディとして日々ライブ会場やフェスに出没。日本の大型フェスは、ほぼ経験済み。”おひとりさま上等”精神でいるものの、カップルで参戦している人を見ると少し寂しくなるのが最近の悩み。フェスは大物を見る楽しみもあるけれど、ニューカマーをまとめてチェックする音楽見本市という位置づけで参戦することが多い。
< 酒井康平(ミュージックソムリエ)
音楽プロダクション勤務30代♂、よく聴く音楽は60年代ソフトロックと松田聖子。学生時代はクラシックを専門にし、日本のロックはどのアーティスト、どの曲から入って良いか分からないまま生きてきた過去を持つ。2013年に”音楽フェス童貞”卒業を果たし、少しずつ音楽フェスに顔を出すようになる。いつか涼しい顔でタイムテーブルを語れる日を夢見ている。
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